Monday, January 22, 2007

文体のリズム

鯨岡峻著『エピソード記述入門〜実践と質的研究のために〜』(東京大学出版会 2005)が届きました。教育が教育の言葉を取り戻すために、音楽が音楽の言葉を取り戻すために、私は質的アプローチが不可欠だと考えます。そこには哲学の言葉が必要です。そして、私は自分の言葉を見つけるための時間が欲しい。

映画「博士の愛した数式」の原作をいつしか読み終えたようです。ふと手にして開いたページから少しずつ読んで、小間切れだけど、たぶん、全部読んだように思います。小川洋子著の原作はどこを開いても小気味いいリズムに溢れていて、これが“文体”というものなんだとしみじみ思いました。私が仕事で使う“文体”の対極にある“文体”です。音楽もいいけど本もいい。

年明けに実家から『芥川龍之介全集』(岩波書店 1977〜)を全巻持って来ました。私がこの全集を買ったのは「書簡」が収められているからでした。「この頃ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまひたい位可愛いい氣がします。」(同第十巻)この書簡の言葉をいつも身近に置いておきたくて買った全集です。でも、今は、芥川龍之介の文体のリズムを身近に置いておきたいのです。小難しい漢語とていねいに紡がれたひらがながゆったりした時間の流れを与えてくれます。芥川龍之介も、ふと手にして開いたところから、いつでも読めるのです。

No comments: